2009年5月1日金曜日

かっくんちゃんの謎


佐賀に昭和の初めに"かっくんちゃん"というストリートミュージシャンがいた。

初めて写真を見たとき、目が釘ずけになり、「ただ者ではない!」っと思った。

かっくんちゃんの本名は市原角一。
少し知的障害があって眼は弱視、背中に3つの瘤がある。
手作りの箱三味線に1本弦で、腕のある弾き手だったようだ。
流しのお礼に頂いたおにぎりは地面に転がして砂の付いた物を食べていたので、
最後は農薬の付いたおにぎりを食べて亡くなり、九大で解剖されたといわれている。
当時(昭和27年)の佐賀新聞の死亡記事を観ると、胃潰瘍で亡くなり、
そのまま地元で火葬されたとあった。




死亡記事が出るくらいだから、かなりの人気者だったと思う。
リアルタイムの70歳以上の方に話を聞くと、喜んで彼の話をされる。
とにかく伝説の多い人だった。
当時は佐賀を中心に、西は佐世保、東は柳川に現れて流しをしていた。

かっくんちゃんは親父達の噂話をしては聞いていたけど、実際写真を見たり、
ゴンチチの「盲目の音楽家を捜して」という本に載っているのを見たり、
地元の若手彫刻家が作った、かっくんちゃん像を観たり、一目は置いていた。

そんなある時、かっくんちゃんのフィールドワークをしているTさんと知り合った。
彼は武雄出身で京都在住の40歳代の人。
お母さんは武雄で小料理屋をされていて、かっくんちゃんとは面識があった人だ。
Tさんは帰省の際に、かっくんちゃんの地元杵島郡白石町須古を中心に、いろいろな人から話を聞いたり、縁のある人にインタビューをしに行ったりしている。
Tさんの話によると、いろいろ難しい事もあるようだが、かっくんちゃんの穏やかな人柄や、人を思いやる心の持ち主であった事も知り、外見に反してホロリとする話もあったのが意外だった。

村の人の話を聞く中で、嘉瀬川の区長さんの話には驚かされたそうだ。
なんでも、昭和33年頃の事だと思うが、三夜待仲間(飲み仲間)で広島の厳島神社へ行った時の事。
参道の写真館にふと立ち寄ったら、そこにかっくんちゃんの写真があったという。
しかも当時の横綱であった「栃錦」とのツーショットだ!
二人並んで写っているその写真は、かっくんちゃんの方が体格が良く写っていて、
「かっくんちゃんの方が相撲取りのごたっ!」と仲間同士で笑い合ったという。
かっくんちゃんは180センチはなかったと思うが、当時では大きな方だったではないだろうか?


しかし何故広島に?何故栃錦と?


この事実を調べに、広島の厳島神社まで行った人は二人いる。
一人はかっくんちゃん像を制作したMさん、もう一人はTさんだ。
二人に聞いた話では、これといった手がかりはなかったそうだが、
Tさんは写真館のご家族の方に「調べてはみる」という返事をもらったそうだ。

その後厳島神社に行ったTさんの話が興味深かった。

__________________mixiコミュ引用___
厳島神社に祀られている三女神は

・市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)
・田心姫命(たごりひめのみこと)
・湍津姫命(たぎつひめのみこと)


・・・・ここで「杵島(きしま)」の文字を
みつけたときには、震えました。

「市 杵島(いちきしま)」は「厳島(いつくしま)」
の由来のひとつといえるのでしょうか。

かっくんちゃんが神話の域でつながってきました。
________________________

そういえば、
かっくんちゃんの家の近くにある「縫の池」も「厳島神社」です。

ともに芸能の女神、弁財天を奉ってあります。
元はインドのサラスヴァティーという名でヴィーナという弦楽器を持った神です。




神様と言うと、地元の納塚春夫さんがかっくんちゃんを綴った、
「杵島の花筒」の一説を思い出します。

文の引用は問題があると思うので要約すると、
ヤンボシ(かっくんちゃんの自称)の首の後ろの3つ瘤は
「芸の神様が乗り移っている」と自分で言っていた。
ヤンボシは塩田の琵琶法師について修行していたが、3日で破門になった。
杵島山を越えて帰る途中、三社(さんやしろ)の祠堂で昼寝をした。
その時、白髪の神様が現れ、ヤンボシの首の根を三度叩いた。
「これから芸の道を仕込んでやる」
云い残して神様は消えた。


関連つけたら取り留めが無くなりそうですが、妄想すると実に面白い。
当時の佐賀のあの時代に人々に一時の娯楽を与え、話題にされ,愛されていた事を思えば、
神様がそうやってかっくんちゃんという男を選んだとも思えてくる。
自分は生きてはいない時代の話なのに、いまだに人の心に影響を与えているというのも凄い事だ。また、当時の佐賀のおおらかさも良かったのだなと思えてくる。

小説や映画になっても、おかしくない人だといつも思う。


参考
「杵島の花筒」納塚春夫
「佐賀の吟遊詩人 かっくんちゃん」mixiコミュ
佐賀市立図書館の郷土コーナーにもかっくんちゃんのファイルがあります。

1 件のコメント:

  1. なんとも、時代の雰囲気が伝わってくるエピソードですねー。
    あのころの佐賀だからこそ、でしょうか。

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